不動産を贈与するには!?知っておくと得な贈与税を非課税にするための特例を解説!
公開日:2022年09月09日 最終編集日:2022年09月09日
目次
不動産は資産ですので贈与することができます。しかし、忘れてはいけないのが贈与税です。特に不動産は手軽に現金化できるものではないため、贈与された人が納税に必要な現金をすぐに準備できずに困るという事態が起こりやすく注意が必要です。
今回はそんな贈与税ついて解説すると同時に、節税対策にもなる特例についても併せて解説します。不動産資産の贈与を検討中の方はぜひ最後までお読みください。
1. 不動産贈与の基本知識
まずは贈与税について基本的な知識を把握しましょう。
ここでは以下の4つの内容について解説します。
- 贈与税の概要
- 贈与税が課される状況
- 申告と期限
- 申告方法
1.1 贈与税とは?
贈与税は個人から個人へ現金や不動産などの資産や財産が譲り渡されたときに課税される税金です。個人ではなく法人などから贈与が行われた場合には贈与税ではなく所得税が課税されますので個人向けの税金と考えると分かりやすいでしょう。
納税義務は資産や財産を譲った人ではなく、それを譲り受けた人に課されます。
1.2 どんな時に贈与税がかかる?
贈与税がかかるのは主に以下の4つのような状況が挙げられます。
1.年間の贈与額が110万円を超えるとき
2.実際の価値よりも大幅に低く見積もられた価格で資産や財産を譲り受けたとき
3.借入金の返済を免れたとき
4.名義変更が対価なく行われたとき
例えば現金で50万円が贈与された場合は、1. に該当しないため、贈与税はかかりません。
ちなみにこの110万円という金額は贈与税の基礎控除になります。
2.は有償譲渡などを介して不当に利益を得ないようにするためで、例えば3,000万円の不動産を1,000万円で譲り受けた場合などに課税されます。この場合の贈与税の課税対象額は本来の価値である3,000万円との差額となる2,000万円です。
3.については不動産の購入資金を父から借りたにも関わらず、返済を免除してもらったケースを考えると分かりやすいでしょう。この場合は実質的に購入資金もしくは不動産そのものが父から子に贈与されているのと同じ状況です。
4.はマンションの名義変更などが当てはまります。名義変更そのものは当事者間で対価の有無に関わらず行うことができますが、対価がない場合は無償で譲り受けたことになりますので、贈与税は該当のマンションの価値に応じて課税されます。
1.3 贈与税の申告と納税期限
贈与税は課税対象となる資産や財産を贈与された人が申告するというルールがあります。
取引や贈与履歴などから自動的に納税書が送られてくるわけではありませんので注意しましょう。申告と納税には以下のように期限が設けられています。
課税対象となる贈与が行われた期間 | 毎年1月1日~12月31日 |
上記期間に該当する贈与の申告・納税期限 | 翌年の2月1日~3月15日 |
1.4 贈与税の申告方法
前述したように贈与税の申告者は資産や財産を譲り受けた人ですが、本人以外にも税理士に申告を依頼することもできます。税理士に依頼すると費用がかかるのがデメリットですが、不備のない適切な申告が期待できますので、高額な贈与や複雑な申告内容が想定される方にはおすすめです。
申告は贈与が行われた地域の税務署窓口で直接行う、もしくは郵送や国税電子申告・納税システム(e-Tax)を利用しても行うことができます。
2. 不動産の贈与税の計算方法
では次に具体的な贈与税の計算方法について確認していきましょう。
2.1 暦年課税方式とは
すでに「贈与税の申告と納税期限」の項目でもお伝えしましたが、贈与税は毎年1月1日から12月31日までを一つの期間とし、その翌年の定められた期間に申告と納税を行うというスケジュールがルール化されています。これは暦年課税方式と呼ばれ、法律で決められた課税制度の一つです。
2.2 贈与税の算定方法
贈与税の納税額は下のように求めることができます。
(贈与財産の課税価格-110万円※基礎控除) × 税率 - 控除額 |
例えば課税価格3110万円の不動産を贈与された場合は、基礎控除である110万円を引いた3,000万円に対して、税率を乗じたあとに控除額を引きます。
税率と基礎控除以外の控除額については次の項目にある速算表で確認することが可能です。
2.3 暦年課税の税率
贈与税額を求めるときに必要な税率と基礎控除以外の控除額を確認するときには、贈与がまず一般贈与か特例贈与のどちらに該当するか確認しましょう。
一般贈与 | 下記の「特例贈与」に該当しない贈与の場合 |
特例贈与 | 直系尊属(父母や祖父母など)から20歳以上の直系卑属(子や孫)への贈与の場合 |
それぞれの税率と控除額を記した速算表は以下のようになります。
例えば不動産評価額2,110万円のマンションを子どもへ贈与した場合は特例贈与となり、その贈与税額は635万円となります。
(贈与財産の課税価格-110万円※基礎控除) × 税率 - 控除額 = 贈与税額 |
(2,110万円-110万円) × 45% - 265万円 = 635万円 |
一方、一般贈与で遠い親族や第三者へ同じマンションを贈与する場合は、以下の税率と控除額が適用され、贈与税額は750万円となります。
(贈与財産の課税価格-110万円※基礎控除) × 税率 - 控除額 = 贈与税額 |
(2,110万円-110万円) × 50% - 250万円 = 750万円 |
2.4 贈与時の不動産の評価額
不動産を贈与が行われたときの贈与税額の算出は不動産評価額を正確に割り出すことが大切です。
現金贈与であれば5,000万円は5,000万円ですが、通常5,000万円で購入した分譲マンションの評価額がそのまま5,000万円になることはありません。
築年数が経過したり地価が下がれば3,000万円という評価額になったり、反対に築年数が経ってもヴィンテージマンションとして価値が出たり地価が上がったりすれば7,000万円という評価額になることもあります。
簡単に算出できない不動産の評価額ですが、建物は固定資産税評価額、土地については通常「路線価方式」と「倍率方式」という方法で割り出します。
方式 | 概要 | 計算式 |
路線価方式 | 路線価が設定されている地域の土地を路線価に基づいて評価する方法 | 路線価×各種補正率×土地面積 |
倍率方式 | 倍率方式は路線価が定められていない地域の土地を評価する方法 | 固定資産税評価額×倍率 |
贈与予定の土地がどちらの方式に該当するかは、国税庁の「路線価図・評価倍率表」で確認することが可能です。ちなみに不整形地で利用が困難な土地、また土壌汚染されている土地などの「特殊な土地」は両方の方式では実態にそぐわない高い評価額になってしまうこともあります。
そのような懸念がある場合は不動産鑑定士に不動産鑑定評価を依頼し、その評価額が認められれば贈与税計算に使うことが可能です。
このような手順を踏むことで実態とかけはなれた高い贈与税を支払うことを防ぐことができます。
3. 贈与税軽減措置の概要
贈与税には節税対策にもなる特例制度がいくつかあります。贈与税軽減措置とも言われますが、この項目ではその概要について解説します。
3.1 ①配偶者控除
まず最初に紹介するのは配偶者控除です。これは夫婦間でマンションなどの不動産を贈与したときに、控除額が最大2,000万円までに拡大される制度です。これは110万円の基礎控除とは別枠となりますので、基礎控除と合わせると最大2,110万円までが非課税となります。
ただし以下の条件がありますので注意しましょう。
- 婚姻期間が20年以上であること
- 居住用の不動産であること
- 贈与された人が実際にその不動産に継続して住む見込みであること
最後の条件には期限があり、贈与が行われた翌年の3月15日までに居住を実施する必要があります。
3.2 ②相続時精算課税制度
先ほど暦年課税方式についてお伝えしましたが、実は贈与税には相続時精算課税制度という課税方式もあります。
これは非課税額が2,500万円までと大きく、それを超える贈与に一律で20%の税率が適用されるという方式です。暦年課税方式よりも贈与時の控除額が優遇されていますが、この方式は贈与を行う当事者間で将来的に相続が発生した場合に対象の不動産贈与が相続税として扱われます。
例:父名義の不動産評価額2500万円のマンションを子ども贈与する |
2,500万円までは控除されるため贈与が行われた段階で贈与税はかからない。ただし父が死亡した時点で、2,500万円のマンションが相続財産として扱われる。もし父の相続財産がその他に7,500万円あった場合は、それらを合算した1億円が相続財産となり相続税の課税対象になる。 |
この相続時精算課税制度を利用するにも条件があり、以下の3つを満たす必要があります。
- 贈与をした年の1月1日時点で贈与する人が60歳以上
- 上記と同日時点で贈与された人が20歳以上
- 親もしくは祖父母が贈与する人であること
なおこの方式を行う場合は暦年課税方式で設定されている110万円の基礎控除は適用されません。
3.3 ③住宅資金の贈与
贈与が「住宅資金の贈与」に該当する場合は、一定の金額が非課税になります。
住宅資金贈与 | 父母や祖父母などの直系尊属から直系卑属(子や孫など)へ住宅を新築したり増改築したりするために贈与されるお金 |
非課税となる金額は住宅の種類によって以下のように異なります。
住宅の種類 | 非課税限度額 |
耐震・省エネまたはバリアフリー住宅 | 1,000万円 |
その他の住宅 | 500万円 |
この制度には適用期限が設けられており、2023年の12月31日までですので注意しましょう。
ちなみに2022年の法改正によって贈与される人の年齢制限が20歳以上から「18歳以上」に引き下げ拡大されています。
4. 「贈与」と「譲渡」と「相続」の違い
ここでは贈与と混同しやすい「譲渡」と「相続」の違いについて解説します。
4.1 「贈与」と「譲渡」の違い
贈与と譲渡の大きな違いは「対価」の有無です。贈与は無償で譲り渡されるものであるのに対し、譲渡は対価が伴います。
また贈与は口約束でも成立しますが、譲渡の場合は売買契約書などの何らかの取引履歴が存在する点にも違いがあります。
これから不動産の贈与を予定している人はそれが贈与に該当するのか譲渡になるのか、しっかりと確認してから行うようにしましょう。
4.2 「贈与」と「相続」の違い
相続は無償という点では贈与と共通しています。ただし、資産や財産を譲る人がそれを行うタイミングで「生存しているか」どうかという大きな違いがあります。
生前していれば贈与、他界していれば相続と呼び方が変わり、相続の場合は遺言書がなければ法定相続人が資産や財産を譲り受けるため、血縁関係のない第三者などに譲り渡すということはできません。
したがって贈与の場合は、「誰に」資産や財産を譲るかを選択肢する余地があることも違いと言えるでしょう。ちなみに、贈与と相続では対象となる資産や財産に関係する法律の取扱いも変わります。
5. 不動産を贈与する際に必要な贈与税以外の税金
不動産を贈与する場合には贈与税以外にも以下のような税金がかかります。
- 不動産取得税
- 登録免許税
- 譲渡所得税
5.1 不動産取得税
不動産取得税は以下のような取引形態で不動産を取得した人に課せられます。
- 売買
- 贈与
- 交換
- 建築(新築、増築、改築)
対価の有無で課税対象かどうかを決めるわけではありませんので贈与でも課税されます。ただし相続に関しては以下に該当する場合を除き不動産取得税はかかりません。
- 死亡を原因とする贈与が認められる場合
- 遺言による法定相続人以外への相続で特定遺贈に該当する場合
前者は分かりやすく言うと「死亡したらマンションAを譲る」といった死亡を起因とするケースです。これは贈与と見なされるため不動産取得税は支払わなければなりません。
後者の特定遺贈というのは、「特定の指定された財産を相続する」という意味で、法定相続人ではない第三者へ「マンションBを相続する」といった場合に該当し、相続として扱われていても不動産取得税の支払い義務が発生します。
ちなみに不動産取得税は「固定資産税評価額 × 税率3%(軽減税率※本来は4%)」で計算することができます。
例:評価額2,000万円のマンションの場合 |
2,000万円 × 税率3% = 60万円 |
不動産取得税は納税通知書が届きますので、金融機関やコンビニで支払うことができます。
不動産取得税には軽減措置もありますが、取得日から約60日以内に手続きを行う必要がありますので管轄の税事務所などに早めに確認するようにしましょう。
5.2 登録免許税
不動産贈与を受けた場合には法務局に対象の不動産を登記しなければなりません。この登記は所有権移転登記と呼ばれ、贈与の場合は「固定資産評価額 × 税率2%」でその税額を求めることができます。実際の手続きは複雑な場合があるため司法書士に依頼することが多いです。その場合の費用は5万円~10万円程度が相場になります。
5.3 譲渡所得税
譲渡所得税というのは通称で、税法上の正式名称は所得税と住民税に該当します。
この譲渡所得税は「どんな時に贈与税がかかる?」の項目でお伝えした「実際の価値よりも大幅に低く見積もられた価格で資産や財産を譲り渡した(有償譲渡)」場合などに課税されます。これは「見なし贈与」とも言われ、不動産を大幅に安く売却した人に譲渡所得税が課せられ、それを譲り受けた人は本来の価値との差額に対して贈与税が課税されます。
例:父名義のマンションを2,000万円で子どもに有償譲渡(売却)※本来の価値は5,000万円 |
父:売却額の2,000万円に対して譲渡所得税が課税される 子ども:本来の価値との差額3,000万円に対して贈与税が課税される |
少し複雑ですが、父は売却(有償譲渡)しているため「譲渡所得税」、子は支払った2,000万円に対してではなく「本来の価値との差額」である3,000万円に贈与税がかかるという形です。
6. まとめ
今回は不動産の贈与に伴う贈与税について解説しました。不動産贈与を検討している人は今回の記事をぜひ参考にしていただき、贈与税の仕組みや計算方法、また特例などの理解を深めるのに役立てていただければと思います。
もし贈与の規模が大きい、もしくは複雑な贈与を行う場合には税理士に相談することも検討すると良いでしょう。