賃貸物件で立ち退きを求められたら?トラブルにならないための立ち退き料の相場や交渉のポイントを解説!

公開日:2022年06月24日   最終編集日:2022年06月29日

賃貸物件で立ち退きを求められたら?トラブルにならないための立ち退き料の相場や交渉のポイントを解説!
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目次

賃貸物件に住んでいると稀にオーナー(貸主)から立ち退きを求められることがあります。
せっかく時間と労力をかけて探した部屋から退去しなければならないとなると、簡単に納得することは難しいでしょう。
しかし断固として立ち退きを拒否するという姿勢は裁判に発展したりする恐れもありますのでおすすめしません。


今回は立ち退きを求められたときの適切な対処法について解説します。
立ち退き料の相場や交渉のポイントなど、知っておくと役に立つ情報もあわせて紹介しますのでぜひ最後までお読みください。

1. 立ち退き料とは?どんな時に立ち退きを求められる?

立ち退き料とは?どんな時に立ち退きを求められる?
しっかり契約を結んでいるにも関わらず、立ち退きを要請されることに疑問を持つ人も少なくないでしょう。
この項目では立ち退きとは何かということから、借主(入居者)の法的な立場やよく耳にする「立ち退き料」について解説します。
またどんな場合に立ち退きを求められるかについてもあわせて紹介しますので、まずは立ち退きに関する基本的知識を得ていきましょう。

1.1 立ち退き料とは

そもそも「立ち退き」とは、契約期間中にオーナーから解約を求められたり、契約更新を拒否されることです。
現在住んでいる部屋からの退去(明け渡し)を一方的に求められることとも言い換えることができますが、「立ち退き料」はそのときにオーナーから借主へ支払われる金銭のことになります。
この立ち退き料は、次の項目で解説する「借地借家法」と「借主(賃借人)の権利」に深く関係しているため支払われます。

1.2 賃借人は法律で守られている

一般的に広く利用されている賃貸の契約は「普通借家契約」という形態になります。
この契約の特徴は「借主が希望すればその物件にずっと住み続けられる」ことです。これは、「正当事由」がない限り、オーナーから契約の解約や更新の拒否を行うことができないということを意味しています。


正当事由については次の項目で解説しますが、借地借家法第28条では、先ほどの立ち退き料を「正当事由の補完要素として考慮する」という主旨の記載がされています。
オーナーの立場からすると借主に立ち退きを応じてもらうことは簡単ではありません。従って、立ち退き料の支払いをもって納得してもらうという側面があります。

1.3 立ち退きを求められるケース

立ち退きを求められる場合には以下のようなさまざまなケースが考えられます。

  • 老朽化がひどく重大な危険があるために建て替える
  • 単に古くなったので建て替えたり大規模リフォームを行う
  • 公共事業や都市の再開発エリアの対象となった
  • 賃貸に貸し出すのではなくオーナーが自分自身で住む
  • 借主が契約違反をしている

このようなさまざまなケースがありますが、これらが「正当事由」に該当するかどうかは個別事情によって異なります。
ちなみに最後の「契約違反」は正当事由であり、立ち退き料が支払われることはありません。
正当事由かどうかは主に以下のことを加味して総合的に判断されます。

  • オーナーと借主の建物を使用する必要性
  • 今の建物の利用状況
  • 今の建物の状況や状態
  • 契約の内容が定められたときの事情など

これらに加えてすでにお伝えした立ち退き料の額などが補完要素となります。

2. 立ち退きを求められたら

立ち退きを求められたら
ではこの項目では実際に立ち退きを求められたときの流れについて解説します。
今後もしかしたら立ち退きを要請されることもあるかもしれませんので、そのときのためにぜひ把握しておいてください。

2.1 立ち退きの流れ

立ち退きは貸主から時間的な余裕をもって貸主に書面で知らされます。
具体的には契約の解約の場合は6カ月前から、更新の拒否の場合は契約更新の1年~6カ月前です(借地借家法第26条27条)。ただし契約違反の場合はこれに該当しないことがあります。
立ち退きの申し出を知らせる書類には、その経緯や理由、また退去の日付けなどが記載されていることが一般的です。
電話や対面でも説明が行われることがありますので、不明な点がある場合は遠慮なく質問するようにしましょう。


立ち退きの申し出に関する情報を得たあとは必要に応じて交渉を行います。最終的に納得できる条件を得られれば、できるだけ早く立ち退きに応じる意思をオーナーに伝えましょう。
その後は次の住まいを探す必要がありますので、部屋探しを行い、退去日にあわせて引っ越しの準備を行います。
ちなみに立ち退き料は次に住む物件の初期費用や家賃にも関係することがありますので、交渉と同時進行で部屋探しを行う場合もあります。

3. 立ち退き料の相場と内訳

立ち退き料の相場と内訳
この項目では気になる立ち退き料の相場や内訳について解説していきます。
立ち退き料そのものは法律で定められた算出方法があるわけではありませんが、目安を知っておくと相場からかけ離れた不利な条件で立ち退くこともなくなりますので、ぜひチェックしてください。

3.1 マンションやアパートの立ち退き料の相場

マンションやアパートなどの集合住宅の立ち退き料の相場は家賃の6カ月~10カ月分です。
この金額はあくまでも目安になりますので、必ずしもこの額が支払われるわけではありませんので注意しましょう。
立ち退きしなければならない理由や次に住む部屋の家賃、また引っ越しに伴う費用なども加味されますので、相場より低くなったり反対に高くなったりすることがあります。

3.2 店舗の立ち退き料の相場

立ち退きを要請されるのは住居だけではありません。飲食店や小売店などの店舗も立ち退きを求められることがあります。
事業を行っているお店に対する立ち退き料は、住居よりも以下の理由で高額になる傾向があります。

  • 移転するときの費用がより高額になる
  • 営業損失が考慮される

店舗の場合は単に引っ越すだけでなく移転先の内装なども行わなければなりません。また、新住所を知らせる手間や顧客への周知なども必要になります。
さらに場所が変わることで、これまでと同じような売上をすぐに上げることが難しい業種もありますので、その営業損失も考慮されるのが通常です。


その他にも立ち退きに伴って一時的に休業しなければならなかったり、社用車や営業車を駐車するスペースを再度確保するなどの手間も加味されます。
家賃10万円前後の店舗で1000万円~1500万円の立ち退き料が相場と言われていますが、実際には事業内容や売上、その他諸々の事情によって金額は大きく変わるケースがほとんどです。
従って、立ち退き料が数百万円で済むケースもあれば億単位になることもあります。

3.3 立ち退き料の内訳

では実際に立ち退き料はどのような名目で構成されて支払われるのか、その内訳を解説します。
立ち退き料を決めるときに重要になるのは主に以下の4つです。

  • 引っ越しに伴う費用
  • 新しい引っ越し先へ入居するときに必要な費用
  • 差額家賃
  • 慰謝料(迷惑料)

3.3.1 引っ越しに伴う費用

当然ですが立ち退きの必要がなければ引っ越しする必要もありませんので、引っ越しにかかる費用は立ち退き料に含まれます。
ちなみに引っ越しにかかる費用は、荷物の量や引っ越し先までの距離はもちろん、引っ越しをする時期などによっても異なりますので、適切な金額になっているかよく確認するようにしましょう。

3.3.2 新しい引っ越し先へ入居するときに必要な費用

新しい引っ越し先にかかる費用で立ち退き料に含まれるものには、主に以下のようなものが挙げられます。

  • 敷金
  • 礼金
  • 仲介手数料
  • 火災保険
  • インターネット回線などの契約料

その他にも引っ越しに伴って解約せざるを得なくなったサービスへ解約料や違約金なども立ち退き料に含まれることがあります。

3.3.3 差額家賃

引っ越し先の家賃と現在の家賃との差額分も立ち退き料に含まれるケースもあります。
これは現在の家賃よりも高い家賃の部屋を借りる場合に考えられますが、その差額分が立ち退き料に含まれるかどうか、またその期間はケースバイケースです。
差額家賃が立ち退き料に含まれる場合は一般的に2年程度の期間で計算されます。ただし、あえて高額な家賃の物件を借りるなどした場合はその限りではありませんので注意しましょう。

3.3.4 慰謝料(迷惑料)

慰謝料や迷惑料という名目で支払われる立ち退き料もあります。
今住んでいるところを退去し新しい物件への引っ越しは、時間と労力が少なからずかかります。そんな手間に対して支払われるのが慰謝料や迷惑料です。
具体的に細かな項目に分けて計算されることはなく、一式という形で補償してくれることがほとんどになります。
ちなみに、退去や引っ越しに伴う手間に対してだけでなく、それに関係する精神的負担も慰謝料や迷惑料に含まれていると考えるのが一般的です。

4. 立ち退き料の交渉のポイント

立ち退き料の交渉のポイント
すでにお伝えしたように、立ち退き料は決まった金額設定があるわけではありません。
従って交渉次第という側面がありますが、ここでは円滑に交渉を行い、立ち退き料で不利益を被ってしまわないために知っておくべきポイントをお伝えします。

4.1 交渉の相手は誰?

立ち退きに関する交渉を行う相手は、物件のオーナーもしくは管理会社、場合によってはオーナーが依頼した弁護士というケースもあります。
規模の大きなマンションやアパートだと、オーナーだけで全ての入居者(借主)と個別に交渉するのは難しくなりますので、管理会社などが代理で対応することは多いでしょう。
もし複雑な事情を抱えながら立ち退き交渉を行わなければならないときは、弁護士の力を借りることもあり得ます。


ちなみに借主の場合は自分で交渉にあたることが一般的ですが、弁護士などの専門家に依頼することも可能です。
ただし依頼には費用がかかりますので、希望通りの立ち退き料が支払われても最終的な費用負担が重くなることもありますので、専門家に依頼するときは慎重に検討するようにしましょう。

4.2 立ち退き料の交渉のポイント

立ち退き料の交渉では、押さえておくと役に立つ以下のようなポイントがあります。

  • 立ち退きが必要な理由をしっかり確認する
  • 立ち退きによって生じる不都合や不利益を説明する
  • 一定の理解と妥協をする
  • 交渉内容や条件は書面にしてもらう

ではそれぞれを確認していきましょう。

4.2.1 立ち退きが必要な理由をしっかり確認する

なぜ立ち退かなければならないかという理由を知ることは、交渉にのぞむ姿勢に大きく影響しますので重要です。
例えば高齢のオーナーが病気になってしまい賃貸事業を引き継いでくれる親族などもいない場合、どこかのタイミングで所有する不動産を整理する必要があります。
入居者全員が自主的に退去してくれるのを待っている時間的猶予がないなどの事情が分かれば、立ち退きの申し出に協力的に対応することもできるでしょう。


立ち退きを求めるのにはそれなりの理由、もしくはやむを得ない理由があることが一般的です。
稀にオーナーの利己的な理由であることもありますが、それを判断する意味でもなぜ立ち退く必要があるのかをできるだけ正確に確認するようにしましょう。

4.2.2 立ち退きによって生じる不都合や不利益を説明する

借主は立ち退きによって被ることになる不都合や不利益をオーナーに理解してもらうことも大切です。
例えばペットを複数匹飼える手頃な家賃のアパートという条件で今の物件に住んでいるのであれば、同じような条件で新しい部屋を探すのは容易ではありません。
その他にも介護が必要な親の家へ徒歩圏内で、かつ自分の職場へのアクセスも良いという条件を理由に今の物件を選んで住んでいることもあります。
もし近隣にそのような希望条件を満たす空き物件がなければ、親の介護と忙しい仕事との両立が難しくなるでしょう。


今の物件を選んだ理由は人それぞれですが、特にその物件でなければならない事情などがある場合は、それをオーナーに理解してもらうようにしましょう。
そうすることで、差額家賃や慰謝料などの面で便宜を図ってくれることもあるかもしれません。
少なくとも事情を伝えないことには相手はそれを考慮することすらできませんので、立ち退きによって生じる不都合や不利益を伝えることは重要です。

4.2.3 一定の理解と妥協をする

立ち退き料の金額に関しては、支払う側のオーナーはできるかぎり負担を少なくしたいと考え、受け取る側の借主はできるだけ多くもらいたいという正反対の考えを持っていることが通常です。
もしお互いが一歩も譲らないという姿勢だと交渉の余地はありません。そうなってしまうと交渉が長引くだけでなく、裁判をして司法の判断を委ねるということも考えられます。


もちろん裁判を行うことが悪いわけではありませんが、判決次第では自分の主張が全く認められず、立ち退き料も当初提示されていた額より少なくなるという思わぬ事態になることもあるかもしれません。
オーナーができる限り誠意をもって対応してくれているのであれば、一定の理解を示して妥協することも立ち退き料の交渉では大切です。

4.2.4 交渉内容や条件は書面にしてもらう

立ち退き料の交渉中は、できるだけこまめにその内容や条件を書面でも通知してもらうようにしましょう。
これは口頭でやりとりすることによるトラブルを避けるだけでなく、一連の交渉の流れや進み方をあとから見返すことができるという利点もあります。
少なくとも立ち退き料に関することが全て決まった時点では、合意書という形でその内容や条件を記載して提出してもらい、お互いの認識の相違がないか文面で確認できるようにしておきましょう。

4.3 立ち退き料はいつ支払われる?

立ち退き料が支払われるタイミングは、一般的には建物の明け渡し日かそれ以降になります。
ただ、支払うタイミングは双方が合意していればいつでも問題はありませんので、立ち退き料の交渉をするときに一緒に相談して決めると良いでしょう。
もし立ち退きに伴う引っ越し資金などを自分ですぐ用意できない場合などは、オーナーに事情を話すことで早めに支払ってもらえることもあるかもしれません。
いずれにしても「支払い日」は非常に重要ですので、しっかりと取り決めをしておくようにしましょう。

5. 立ち退き料に税金はかかるのか?

立ち退き料に税金はかかるのか?
決して少なくない額になることが多い立ち退き料ですが、気になるのは課税されるかどうかです。
ここでは最後に立ち退き料と税金について解説します。

5.1 消費税はかからない

立ち退き料は税務上「不課税取引」として扱われますので消費税はかかりません。
これは立ち退き料が「対価を得る取引」ではなく、寄付や贈与、また違約金や損害賠償金という性質の取引に分類されることがその理由です。

5.2 所得として確定申告が必要

立ち退き料は「所得」と見なされますので、受け取った場合は確定申告を行う必要があります。
ただし同じ立ち退き料でも、その性質によって所得区分が変わりますので注意が必要です。
単なる住まいとして物件を使用しており、個人事業なども行っていない場合の立ち退き料の所得区分は「一時所得」に該当します。


このケースで、例えば「立ち退き料が120万円」「引っ越し費用が60万円」かかった場合は以下のように一時所得の金額を算出します。


一時所得 総収入金額 - 収入を得るために支出した金額 - 50万円(特別控除額)
10万円 120万円 - 60万円- 50万円

上記の場合、一時所得は10万円となります。
課税対象は「一時所得の50%」になりますので、「5万円」に対して所得税と住民税がかかります。
※給与を受け取っている人の場合、給与と退職所得を除くその他の各種所得金額の合計額が年間20万円以下の場合は、原則として確定申告を行う必要はありません。(参考:国税局

6. まとめ

今回は賃貸物件の「立ち退き」に関して詳しく解説しました。
立ち退きを求められる機会はあまり多いとは言えませんが、どんなタイミングでそれが訪れるか分からないのも事実です。
慌てて不利な交渉をしてしまうことのないように、ぜひ今回の記事を参考にしていただき「立ち退き」に関する必要な知識を身に付けていただければと思います。

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