「耐震基準」「耐震等級」「耐震構造」の意味と違いについて解説!耐震性の見分け方を知って安心できる物件選びに役立てよう!

公開日:2022年06月10日   最終編集日:2022年06月28日

「耐震基準」「耐震等級」「耐震構造」の意味と違いについて解説!耐震性の見分け方を知って安心できる物件選びに役立てよう!
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目次

地震が多発する日本では、建築基準法で耐震基準が定められています。
住まいを探すときに耐震性を気にしたことがない方もいらっしゃるのではないでしょうか?
物件によって「耐震基準」や「耐震等級」、「耐震構造」は、それぞれ異なります。


そこで、今回は、「耐震基準」や「耐震等級」、「耐震構造」の意味や違いについて詳しく解説します。
ぜひ最後まで読んでいただき、耐震性の見分け方を学び、安心できる物件選びに役立ててください。

1. 耐震基準とは

耐震基準とは、建築する建物が最低限満たすべき地震の耐性基準であり、建築基準法によって定められています。
地震に対して建物が安全であること、かつ、建物内の人の命を守ることを目的に基準が決められています。


日本では、1920年に建築基準法の基となる市街地建築物法が施行されましたが、耐震基準に関する決まりはありませんでした。
地震による住宅倒壊が相次いだことにより、大きな地震が発生するたびに耐震基準に関する法律は改正され続けています。


耐震基準には、「旧耐震基準」や「新耐震基準」、「現行耐震基準」の3種類があります。
それぞれどのような違いがあるのかを具体的にお伝えしますので、ぜひ確認してみてください。

1.1 旧耐震基準

「旧耐震基準」とは、「旧耐震」とも呼ばれ、1950年(昭和25年)に制定された基準です。


震度5程度の中規模地震が発生したときに、建物が大きな被害を受けずに済み、破損したとしても修復すれば再び生活が可能であることを基準に定められています。
具体的な計算方法は、建物の重さの20%に相当する地震力に対して、外部から力が加わったとしても損傷を残さず、元に戻れる範囲内にある応力の限界値を計算します。
建物の構造材料が破壊されず、安全に利用できる範囲内になるようにする耐震設計法が採用されました。


しかし、旧耐震基準だと震度6以上の大地震が発生したときには、倒壊する恐れがあります。
そのため、旧耐震基準に基づいて建築された物件は、耐震診断を受けることが義務付けられています。

1.2 新耐震基準

「新耐震基準」は、1981年(昭和56年)に制定され、旧耐震基準の安全基準を大幅に強化したものです。


震度6強から震度7程度の大地震でも建物が倒壊しないように定められた基準になっています。
壁にひびが入るなどの被害はあるかもしれませんが、大規模な被害にはなりません。
新耐震基準が制定されるきっかけとなった震災は、1978年6月12日に発生した「宮城県沖地震」です。
宮城県仙台市など広域で最大震度5を記録し、甚大な被害が発生しました。
これを教訓に「新耐震基準」が定められました。


先述の通り、「旧耐震基準」では、許容応力計算が採用されましたが、それに加え、保有水平耐力計算による検証が義務付けられています。
保有水平耐力とは、建物が保有する水平方向の耐力のことです。
大規模地震発生時の水平力に対して、柱や梁の曲げ降伏とせん断破壊を確認し、建物の保有する耐力が建物の必要とされる耐力を上回っていることが条件となっています。

1.3 現行耐震基準

「現行耐震基準」は、2000年(平成12年)に制定されたものであり、地盤調査が義務化されているという特徴があります。
従来、設計担当者に任せられていた壁の配置バランスや壁量、接合部などの条件も明確化され、法律で規制されるようになりました。
2000年6月以降に建築された物件は、耐震基準により、建物自体の安全性が高いことから、中古物件を購入するときは、参考にしてみてください。

2. 耐震等級とは

「耐震等級」は、住宅性能表示制度に定める「品確法」に沿って制定されたもので、地震に対する建物の強度を示す指標です。


先述した「耐震基準」と「耐震等級」は、異なる法規によって定められているため、連動性はありません。
極端な話、「耐震基準」を満たしていれば、「耐震等級」を満たしていなくても建築することは可能です。
「耐震基準」は人命を守ることを目的として制定されていることに対し、「耐震等級」は、人命を守ることに加えて建物を守ることが目的となっています。


物件を探すときに、地震に強い物件に住みたいとお考えの方もいらっしゃるのではないでしょうか?
そのような方は、「耐震等級」について知っておくと、より安全性の高い物件に住むことができるでしょう。
「耐震等級」は、「耐震等級1」や「耐震等級2」、「耐震等級3」の3段階に分かれており、数字が大きくなるほど建物の耐震性能が高くなります。
どのような基準で分けられているのかを詳しく紹介します。

2.1 耐震等級1

「耐震等級1」とは、建築基準法に定められている最低限の耐震性能を満たしていることを示すものです。
数百年に一度発生しうる震度6強から7に相当する大地震に耐えるよう構造計算された建物と言えます。
建築基準法と同等の基準内容のため、建築基準法を満たしていれば、申請することで「耐震等級1」を得ることが可能です。

2.2 耐震等級2

「耐震等級2」とは、「耐震等級1」の1.25倍の倍率の耐震強度があることを表わしています。
耐震基準を上回る耐震性能を得るためには、「壁量計算」と「耐震計算」を用いて設計した物件が対象となります。


壁量計算とは、地震の力に対して問題がないように耐力壁の厚みや配置、材料を決める計算です。
耐震計算とは、構造計算という地震などの荷重によって柱や床などの構造部材に問題がないのか計算をした上で耐震性能を算出するものです。


住宅を建築するときに「長期優良住宅」という単語を聞いたことがある方もいらっしゃるのではないでしょうか?
「長期優良住宅」とは、長期にわたり優良な状態で使用するための措置が講じられた住宅で、耐震等級2以上が求められます。
地震などの災害が発生したときの避難先として指定される学校や病院などの公共施設も耐震等級2以上が必要です。

2.3 耐震等級3

「耐震等級3」は、「耐震等級1」の1.5倍の倍率の耐震強度があることを表わしています。
「耐震等級3」を得るためには、構造計算の「許容応力度計算」を用いて設計された住宅でなければなりません。


「許容応力度計算」とは、地震力による長期荷重や短期荷重を想定して部材等の内部に生じる抵抗力を算出し、各部材が耐えられるかどうかを限界点と比較することです。
分かりやすく言うと、地震によって柱や梁が耐えられるかどうかを検討する作業のことです。
「耐震等級3」は、災害時の救助拠点となる消防署や警察署で建設されており、住宅性能表示制度の耐震性のなかで最も高いレベルの建物と言えます。

3. 耐震構造とは

耐震構造とは、地震などの水平方向の力が働いたときに建物が十分に耐えることができるように設計された建築物の構造のことです。
建築基準法に基づいて定められていますが、土地の状況や建築物の用途によって技術的な基準は異なります。


一般的な基準は、「床や柱などを有効に配置し、構造耐力が安全であること」や「構造耐力上主要部分は、つり合い良く配置し、破壊が生じないよう靭性を持たせること」が挙げられます。
耐震構造」や「免震構造」、「制震構造」の特徴や違いなどについても解説しますので、ぜひ確認してみてください。

3.1 耐震構造

「耐震構造」とは、先述のとおり、地震に耐える構造のことです。
建物が倒壊しないように頑丈につくられており、地震に耐えられるようになっています。
しかし、地震に耐えられる建築物であったとしても揺れに強いわけではありません。
そのため、地震が発生したときには、室内の家具や家電が散乱する可能性に注意しなくてはなりません。
耐震構造は、あくまで地震に耐えられるよう頑丈な建築物であることを覚えておきましょう。

3.2 免震構造

「免震構造」とは、地面と建築物の間に免震装置を設置することで、地震の揺れを吸収し、建物への揺れを感じにくくする構造です。
大型ビルで採用されることが多いですが、免震構造を採用する場合は、高額なコストがかかります。
「免震構造」を採用することによって、実際の地震の震度よりも揺れを軽減し、室内の家具や家電の損傷を軽減することができるでしょう。

3.3 制震構造

「制震構造」とは、建物内部に制震ダンパーを設置することで揺れを軽減する構造のことです。
地震発生時の揺れを吸収し、建物への影響を減らす点においては「免震構造」と同じですが、異なる点は、装置を取り付ける位置です。
「制震構造」は、骨組みに装置を取り付け、「免震構造」よりも費用がかからずに済みます。
構造の費用については後述する「『免震構造』と『制震構造』は『耐震構造』よりもコストがかかっている」で詳しく解説します。


「制震構造」は、大型ビルや高層ビルで採用されています。
特に高層ビルでは、高層階になればなるほど揺れを大きく感じやすいです。
揺れを軽減する構造を取り入れることにより、地震発生時も焦らずに済むでしょう。

4. 戸建てとは違うマンションの耐震性の特徴とは

「耐震基準」や「耐震等級」、「耐震構造」の意味や違いを学ぶと、自分の住まいにも活かしたいと考えている方もいらっしゃるのではないでしょうか?
現在、マンションにお住まいの方は、更新時に耐震性の高い物件に住もうと思っている方もいるかもしれません。
しかし、マンションと戸建ての耐震は異なります。
どのような違いがあるのかを解説します。

4.1 マンションは耐震等級1がほとんど

国土交通省の住宅性能表示制度の利用状況の調査によると、2012年度はマンションなどの共同住宅の88.3%が耐震等級1という状況になっています。
マンションは耐震等級1がほとんどのため、耐震等級2以上の建物を探すことは困難です。
耐震等級だけで耐震性能を比較することは困難と言えるでしょう。

4.2 住宅性能評価書がない場合に耐震等級を調べるのは現実的ではない

耐震等級を調べる方法として、「住宅性能評価書」を確認することが挙げられます。
「住宅性能評価書」とは、国土交通大臣の認可を受けた第三者評価機関が住宅の性能を評価し、結果を記したものです。


マンションの場合は、不動産業者やマンション管理会社に確認する必要があります。
マンションが建設された年数によっては、住宅性能評価書が取得できない場合があるでしょう。
そのようなときは、耐震診断を行い調べることになります。


耐震診断を行うためには、マンション全体を調べることになるため管理組合での合意が必要になり、費用もかかります。
住宅性能評価書がない場合に耐震等級を調べるのは現実的ではないと言えるでしょう。

4.3 「免震構造」と「制震構造」は「耐震構造」よりもコストがかかっている

構造によって、コストのかかり方が異なります。
「免震構造」が一番高額であり、その次に「制震構造」、「耐震構造」となります。


「免震構造」は、免震装置の費用と設置工事の費用が必要です。
また、それらのコストが物件価格に反映されるため、家賃も高くなる傾向にあります。
古い物件の耐震性を高めるために、耐震リフォームをしたり、耐震補強をすることがありますが、「免震構造」は、すでに建てられている物件に後から設置することはできません。


地震後に点検を行うためには、免震装置の点検が必須となり、積層ゴムなど経年劣化する部材の交換が必要です。
また、免震装置を維持管理するためには確認申請の手続きを行う必要があり、そのための費用も必要になります。
「制震構造」は、地震発生後の点検時にダンパー自体の変形状態を確認するだけで問題ありません。
経年劣化する恐れもあるため、取り替えが必要なときもあるでしょう。
「耐震構造」よりも費用はかかるけれど、「免震構造」よりは安価で済みます。


「耐震構造」は、地震発生後の点検で、仕上げ材などを一時的に撤去する必要があり、復旧するためにも工事することになるため費用が発生します。
採用されている構造によって、物件価格が高くなったり、住んでからも特殊装置の維持管理・交換といったメンテナンス費用(修繕積立金)が高くなる可能性があることを覚えておきましょう。

5. 地震に強いマンションとは?耐震性を見分けるポイントを紹介!

マンションによって耐震性が異なるため、耐震性の高い物件をお探しの方は自分で見極める必要があります。
耐震性が高いかどうかを見極めるポイントをご紹介します。

5.1 築年数

築年数が新しいマンションの方が耐震性が高い傾向にあります。
特に注意が必要なのは、築年数の古い物件です。
1981年5月31日以前に建築確認を受けているマンションだと、旧耐震基準が適用されているため、耐震性が低い可能性があります。


新耐震基準を満たすための耐震リフォームが施されているマンションなど、新耐震基準を満たしている物件を選ぶことをおすすめします。

5.2 耐震補強工事の有無

マンションの耐震性が高いかどうかは、耐震補強工事の有無が大きく関わってきます。
耐震補強工事を行ったというだけでは、新耐震基準を満たしていない可能性があるため、どのような耐震補強工事を行ったかを確かめなくてはなりません。
耐震補強工事後にどの程度の強度になったかまで調べておくと安心です。

5.3 マンションの管理体制

マンションの管理体制は、マンションの耐震性にも関係するため、耐震補強工事がされているかどうかだけではなく、管理状態が良好かが重要です。


マンションは一戸建ての住宅とは異なり、耐震診断や耐震補強という取り組みを個人で行うことは不可能であり、マンションの住民にも伝える必要があるなど、手間がかかります。
マンションの購入前に必ず確認しておきたい項目は、「長期修繕計画」です。


現在、マンションの管理体制がしっかりしていたり、住みやすい環境を維持できていることも大切ですが、将来に渡って継続される必要があります。
入居者が安全で快適な暮らしを送れる環境を保てる計画があることで、マンションの資産価値を高く保ち続けることに繋がるでしょう。


「長期修繕計画」の内容が定期的に見直されているかも確認してみてください。
マンションの管理体制は、些細な日常の生活にも表れます。
例えば、「ゴミ置き場や植栽が荒れていないか」、「エントランスやホールなどの共用部分は綺麗かどうか」などを確かめることがポイントです。
これらの内容は、マンションの内見時にも簡単にチェックすることが可能なため、ぜひお試しください。


マンションの管理体制は、「長期修繕計画」だけでなく、「修繕積立金を含む資金計画」も確認しておきたいものです。
なぜなら、急に修繕積立金の値上げなどが発生する恐れがあるからです。
本来、修繕積立金は新築の時から一定の金額ではなく、修繕計画に合わせて見直しが行われ、修繕内容や実施時期によって適正な資金計画が行われます。


しかし、資金計画がされていないと工事費用が間に合わず管理組合の借入や修繕積立金の急な値上げが行われることになりかねません。
マンションの管理状態と併せて、資金面でも管理がなされているかを確認しておくと良いでしょう。

5.4 耐震性の高いマンションの形

マンションに住むときは、おしゃれな外観のマンションがいいとお考えの方もいらっしゃるのではないでしょうか?
複合的な形で高級感のあるマンションに憧れる方もいます。
しかし、耐震性の面ではどうでしょうか?
マンションの形によって、耐震性が異なります。
耐震性の高いマンションの形は、「正方形の単純な形」や「低層階から高層階まで単純な構造であること」です。
耐震性が低いマンションの形を見ていきましょう。

  1. ピロティ構造
  2. 非成型

耐震性が低いマンションの一つ目は、「ピロティ構造」です。
「ピロティ構造」とは、フランス語で「杭」という意味であり、1階の構造だけ柱のみの構造です。
マンションの1階を駐車場として利用したり、店舗として利用するところが多いです。
耐力壁がないため、地震が発生した時は、柱のみでマンションを支えることになり、耐震性として弱いと言えます。
間仕切り壁という石膏ボードなどの壁ではなく、鉄筋コンクリートなどの構造がしっかりとした壁が1階にバランスよく配置されてることが重要です。


耐震性が低いマンションの二つ目は、「非成型」のマンションです。
「非成型」のマンションには、「コの字型」や「L字型」などが挙げられます。
構造的に一体化している場合は、地震が発生した時に、地震力の逃げ場がなくなり、接合部分に被害が発生する可能性が高いです。


しかし、接合部分に空間がある場合は別です。
エキスパンションジョイントで建物の構造上、別棟になっていると耐震性に問題はありません。
「コの字型」や「L字型」のマンションを内見するときは、不動産会社に確認してみると良いでしょう。

6. 耐震基準の違いは税制優遇にも影響がある?

耐震基準を満たすことによって税制が優遇されます。
どのような基準があるのか、どれくらいの税制優遇が受けられるのかを具体的に解説します。

6.1 税制優遇を受けられるのは新耐震基準以降の建物

税制の優遇を受けられるのは、新耐震基準を満たしている物件です。
中古物件であれば、新耐震基準に適合している必要があります。


「住宅ローン減税」は、10年間に渡って「住宅ローンの借入残高」か「住宅の取得対価」のどちらか少ない方の金額が1%所得税から控除されます。
また、登録免許税や不動産取得税の減税も対象です。
新耐震物件だとしても、建築してから25年以上経過している場合は、「耐震基準適合証明」が必要な点に注意してください。

7. まとめ

今回は、「耐震基準」「耐震等級」「耐震構造」の意味と違いについて解説しました。


日本では、いつ地震が発生するかわからないため、常日頃備えておく必要があります。
物件を探すときは、安全な生活を送るためにも、見た目だけで判断するのではなく、構造やマンションの形にも注目してみてください。


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