賃貸物件の法人契約とは?メリットやデメリット、個人契約との違いを解説|審査時の必要書類一覧
公開日:2022年02月15日 最終編集日:2023年03月20日
目次
- 1. 賃貸物件における法人契約とは?
- 2. 賃貸での法人契約の流れ
- 3. 法人契約の入居申し込み時の必要な情報
- 4. 法人契約の入居審査時の必要な書類
- 5. 個人契約と法人契約の違い
- 6. 法人契約時の初期費用
- 7. まとめ
賃貸物件は、法人でも借主として契約を結ぶことが可能です。一般的に法人契約と言われるこの契約は、個人名義の契約とは異なる点がいくつかあります。
例を挙げると、必要書類や入居審査などに関してです。さらに、法人契約ならではのメリットとデメリットもあります。
そこで今回は、賃貸物件の法人契約を検討している方向けに、それらの知っておくべき重要な内容を分かりやすくお届けすると同時に、注意すべき点についても解説します。
最後まで読んでいただくと、法人契約を行う上で必要な知識が得られるだけでなく、より円滑に契約手続きを進めることにも役立ちますので、ぜひ参考にしてください。
1. 賃貸物件における法人契約とは?
賃貸物件における法人契約とは、会社などの事業者が契約者となり、賃貸借契約を結ぶことです。従って、個人名義で契約する個人契約とは異なり、名義人はその法人となります。
個人契約:対象となる賃貸物件に住む入居者本人が名義人となり結ぶ賃貸借契約
法人契約:対象となる賃貸物件に住む入居者が勤務する法人が名義人となり結ぶ賃貸借契約
上記の二つの契約上の違いに関しては、後述する「個人契約と法人契約の違い」の項目で詳しく解説しています。
1.1 どのような時に法人契約をする?
法人契約は法人名義で賃貸物件を借りますが、実際に入居するのはその法人に勤務する社員や事業オーナーです。法人が賃貸物件を契約する場合、主に以下のような2つのケースが考えられます。
- 会社の福利厚生の一環として、社員が住む物件を法人名義で賃貸契約するケース
- 事業オーナーが、自宅兼事務所として賃貸物件を法人名義で賃貸契約するケース
いずれも法人名義で賃貸契約を行いますが、入居者が社員か事業オーナーかの違いがあります。
1.2 どんな物件でも法人契約で借りられる?
次の項目で詳細は解説しますが、法人契約するメリットは多数あります。しかし、全ての賃貸物件が法人契約で借りられるわけではありません。法人の業種や事業内容によっては、貸主が法人契約を許可しない場合もあります。
ただし、そのようなケースでは、不特定多数の人の出入りによるセキュリティ上の問題や、騒音、また近隣住民とのトラブルが想定されるなどの個別の事情が関係しているケースがほとんどです。また、これは賃貸物件を自宅兼事務所として法人契約するケースでよく見受けられます。
従って、福利厚生の一環として、社員の住居用の賃貸物件を法人契約する場合は、通常ほとんどの物件で法人契約が可能であると考えても差し支えはありません。
もちろん例外はありますが、貸主にとっても、法人契約は信用度の面で個人契約より安心できるため、一般的には問題なく契約を進められることがほとんどです。
1.3 法人契約をするメリットとデメリットとは?
賃貸物件を法人契約する主なメリットには、以下のようなことが挙げられます。
メリット
- 契約者が法人となるため、信用度が高く、入居審査が通りやすい
- 複数の部屋を借りるときなどは、家賃減額などの好条件を受けられる可能性がある
- 会社の福利厚生が充実する
- 事業オーナーが自宅兼事務所として借りる場合は、家賃が押さえられる
上記のようなメリットがある一方、法人契約には以下のようなデメリットがあります。
デメリット
- 個人で契約するときと比較して、準備すべき必要書類が多い
- 法人の経営状況や事業継続年数などによっては入居審査が通らないことがある
- 自宅兼事務所として借りるケースでは、ネット上に住所を記載できない場合もある
上記のようなデメリットが考えられますが、必ずしも全ての法人と物件に当てはまるわけではありません。条件が整っていれば、一部のデメリットは解消することができるでしょう。
2. 賃貸での法人契約の流れ
この項目では、賃貸物件を法人契約するときの一般的な流れについて解説します。一連の流れを知っておくことで、準備から契約までをよりスムーズに行えるようになりますので、よく確認していきましょう。
2.1 物件の条件と会社規定のすり合わせ
入居者となる社員自身が物件を選び、法人契約を結ぶ場合は、その物件が会社が定める会社規定を満たしているかを確認する必要があります。
会社規定に定められている物件の条件や制限などの内容は、法人によってさまざまです。一般的には、家賃、間取り、面積に上限が設けられていたり、貸主も法人でなければならないなどと定められているケースもあります。
その他の代表的な会社規定は、契約の種類に関してです。
賃貸物件の契約には、主に「普通借家契約」と「定期借家契約」があります。普通借家契約は、個人契約でも一般的な契約形態で、契約期間満了後は更新が可能です。
一方、定期借家契約には更新という概念がありません。つまり契約期間が満了すると、入居者は退去しなければなりません。貸主と借主が合意すれば、再契約という形で継続して住み続けることは可能ですが、見通しが立てづらいなどのさまざまな不都合が予想されます。
そのため、会社規定では定期借家契約は認められず、普通借家契約のみ可能という制限が設けられていることが多いです。
また、その他にも物件の耐震性やセキュリティ全般に関しても条件や制限が設けられている場合もあります。
2.2 法人用入居申込書の手配と記入
法人契約を結びたい賃貸物件が決まったら、入居申込書を手に入れ、必要事項を記入することが手続きにおける実質的な最初のプロセスとなります。
法人契約の場合、入居申込書は法人専用のものが用意されていることが多いですので注意しましょう。
2.3 必要書類の準備
法人用入居申込書と一緒に提出する必要書類の準備も必要です。
必要となる書類は、物件や法人の事業規模などによって異なります。ただ、不動産会社の担当者が必要書類を指示してくれますので、それに従って準備しましょう。
書類の不備は、差し戻しの原因となるだけでなく、余計な手間と時間もかかってしまいますので、しっかり確認することが大切です。
2.4 入居審査
法人用入居申込書を必要書類と一緒に提出したあとは、入居審査が行われます。
入居審査の通過基準に関しては明確にされることはありませんが、一般的には、以下のような項目に関する審査が行われます。
- 事業内容
- 事業継続年数
- 資本金
- 経営状況
- 納税状況
- 代表取締役の情報
上場会社や知名度のある大手企業であれば、審査に関して大きな心配をする必要はありません。それ以外に関しては、判断は相手に委ねられますので、審査結果を待ちましょう。ちなみに審査にかかる時間は、3日〜1週間程度が一般的です。
入居審査に必要な書類に関しては、「法人契約の入居審査時の必要な書類」の項目をご確認ください。
2.5 初期費用の入金、契約
晴れて入居審査に通ったあとは、契約の手続きに進みます。契約に先立ち、まずは初期費用の支払いが必要です。そのあとに、契約書を正式に取り交わします。
ちなみに、契約書は郵送でのやり取りが一般的です。これは法人印を持ち出すことによる紛失や冒用リスクをなくすためであり、より安全に契約を結ぶための配慮でもあります。
法人契約でもその手続きは入居者が行うこともあります。必要書類などは、総務部などの担当部署が用意してくれることが多いですが、どんな書類が必要なのかを知っておくと良いでしょう。
3. 法人契約の入居申し込み時の必要な情報
先ほどの項目では賃貸物件の法人契約の流れについてお伝えしましたが、ここでは入居申し込みに必要な情報について解説していきたいと思います。
3.1 契約法人情報
賃貸物件の契約を法人名義で行う以上、まずその法人の情報は必須となります。主に以下の様な情報の提供が求められます。
- 会社名
- 代表者名
- 住所
- 電話番号
- 業種
- 資本金
- 年商
- 設立年月
- 主要取引銀行
3.2 入居者情報
法人情報に加えて、実際に物件に住む入居者の情報も必要です。
- 氏名
- 現住所
- 生年月日
- 連絡先
- 国籍
ちなみに、この入居者情報は入居する全員分が必要になります。
3.3 連帯保証人情報(代表取締役情報)
賃貸物件を法人契約する場合、連帯保証人はその法人の代表取締役が務めることが一般的です。従って、連帯保証人としての代表取締役に関する情報も必要になります。
- 代表者氏名
- 現住所
- 生年月日
- 電話番号
4. 法人契約の入居審査時の必要な書類
法人契約の入居審査の判断は、入居申込書と一緒に提出する複数の書類を基に判断されます。ここでは、それらの重要な書類について紹介します。
4.1 契約法人の書類
賃貸物件における法人契約の入居審査で必要となる主な書類は、以下の4つです。
- 履歴事項全部証明書
- 決算書の写し
- 会社経歴書(概要書・パンフレット)
- 法人の印鑑証明書
まず一つめの履歴事項全部証明書ですが、これは会社謄本や法人登記簿謄本のことを指します。履歴事項全部証明書には、現在の登記情報に加え、過去に変更された登記情報も記載されているため、より詳細な法人登記情報が確認できるのが特徴です。
この履歴事項全部証明書は、法務局の窓口、また郵送請求でも手に入れることができます。その他、「登記・供託オンライン申請システム」を利用してオンラインでも交付請求が可能です。
二つめの決算書の写しは、その法人の経営状況を確認することができるため、入居審査に必要となります。
決算書は正確には財務諸表と言い、貸借対照表、キャッシュ・フロー計算書、損益計算書などがそれに該当します。ちなみにこの3つは財務三表と呼ばれ、特に重要視されている書類です。
三つめの会社経歴書は、会社の基本的情報や概要を記載した会社案内のような書類のことを指します。ただし、書式が決まっているものではありません。従って、基本的には会社側で書式から作成する必要があります。
ただ、この会社経歴書は、会社のパンフレットでも代用することが可能な場合がありますので、不動産会社の担当者に確認してみましょう。また、最近ではHPの会社概要を印刷したものでも受け付けてくれるケースがほとんどです。
四つめの法人の印鑑証明書とは、対象の印鑑が、会社設立登記をしたときに法務局に登録したものと同一であることを証明する書類です。
法人の印鑑証明書は、法務局が発行しており、窓口、郵送、オンラインで申請することができます。その他には、法務局に証明書発行請求機が設置されている場合は、それを利用しても発行可能です。
4.2 入居者の書類
契約の名義人となる法人関係の書類以外にも、入居者に関する書類も用意する必要があります。主に、住民票と健康保険証の写し、またパスポートもしくは運転免許証の写しの3つです。
ちなみに複数人で住む場合は、入居する代表者だけではなく、全員分の書類の用意が必要ですので、注意しましょう。
4.3 連帯保証人(代表取締役)の書類
前述しましたが、賃貸物件を法人契約する場合、連帯保証人はその法人の代表取締役となることが一般的です。そのため、その代表取締役に関する書類も必要になります。具体的には、住民票と所得証明書(納税証明書)などが挙げられます。
5. 個人契約と法人契約の違い
ここまで賃貸物件を法人名義で契約する法人契約に関して説明してきましたが、ここでは個人契約と法人契約の違いについてお伝えします。
前述した法人契約のメリットとデメリットにも関係しますので、詳しく確認していきましょう。
5.1 入居審査が通過しやすい
法人の場合は、個人よりも入居審査を通過しやすいという特徴があります。これは個人と法人の信用度の違いが関係しますが、一般的に個人よりも法人の方が社会的信用度が高く見られる傾向があるからです。
特に、一部上場企業や知名度の高い企業、また事業継続年数が長く財務状況も健全な企業であれば、入居審査に関して心配はいりません。
一方で、事業継続年数が短かったり、資本金が少ない、また赤字経営が続いている企業の場合は、審査を通過する可能性は低くなります。
このように法人契約による審査はその法人の信用度が重要視されますが、個人よりも法人契約の方が入居審査通過の可能性が高いのが通常です。
特に、入居者個人では入居審査に通りづらいような高額な家賃の物件は、法人契約にすることで審査に通過することもあります。
個人契約の場合は、家賃は月収の3分の1以内が審査の判断基準の一つと言われていますが、法人契約の場合はそのような判断基準で審査を行いません。そのため、入居者本人の個人契約ではなく、法人契約にすることで、本来であれば契約できない物件も契約が可能となるケースも出てきます。
5.2 必要書類が個人契約より多い
個人契約と法人契約の違いの一つには、法人契約は個人契約に比べて必要書類が多いという点が挙げられます。これは、「法人契約をするメリットとデメリットとは?でも触れましたが、法人契約のデメリットの一つです。
ただし、賃貸契約期間中も継続して各種書類の提出が必要なわけではなく、基本的に契約に関するプロセス中の限定された期間だけですので、大きなデメリットとは言えません。
ちなみに下の表は、個人契約に必要な書類と、法人契約で必要な書類をまとめたものです。
不動産会社や物件によっては、上記以外の書類も求められるケースもありますが、いずれにしても、法人契約の場合は、個人契約と比較して必要書類は多くなります。
6. 法人契約時の初期費用
最後にこの項目では、賃貸物件を法人契約するときの初期費用についてお伝えします。先に結論を言うと、基本的に初期費用は個人契約でも法人契約でも違いはありません。
必要となる初期費用は物件によって異なりますが、契約の名義によってその初期費用の額が変わるということはなく、同じです。従って、法人契約だからという理由で、経済的な負担が増えることはありません。
ちなみに、初期費用は一般的に、敷金、礼金、仲介手数料、火災保険料などが挙げられます。これらの費用を法人側か入居者側のどちらが負担するかは、社内規定で定められていますので、あらかじめ確認しておくと良いでしょう。
一部例外として、賃貸物件を自宅兼事務所として法人契約するケースでは、貸主によっては敷金を高く設定することもあります。これは、多くの人の出入りが想定され、退去時の原状回復費用が通常よりも高額になることが予想されるからです。
敷金は原状回復にかかる費用の原資となります。そのため、敷金を高く設定し、原状回復の費用として備えている形です。
7. まとめ
今回は、賃貸物件の法人契約に関して解説しました。個人契約で賃貸物件を借りたことがある方は多いと思いますが、法人契約の経験がある方は少ないと思います。
ぜひ参考にしていただき、スムーズでトラブルのない法人契約の手続きに役立てていただければと思います。
シンシアでは、東京都内を中心に高級賃貸物件を多数扱っております。法人契約も可能ですので、ご興味のある方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。